骨盤ベルト、昔はゴムバンドだった

今やすっかり定着した感のある骨盤矯正ですが、スリムロイナーが開発された1993から発売された1995年頃は、「骨盤矯正」という言葉は一般的ではありませんでした。 もちろん骨盤を締めて腰痛を軽減したり、余計な脂肪を付き難くくしようという考え方は古くからありましたが、今ほど多くの情報には行き当たることはなかったのです。

最も古い方法はゴムバンドによるものでした。 幅広のゴムバンドやコルセットタイプのものは、主にウエストや下腹部に巻いて、振動から内臓を守ったり、衰えた表層筋(外側の筋肉)を補完する目的で使われ、幅の狭いタイプは一部の整骨院や外科などで、腰痛などの痛みを取り除いた後の状態を長く保つために、或いは一時的に痛みを緩和する目的で使われていました。

しかしゴムバンドの場合、使用時に蒸れたり、その特性上徐々にきつく感じる様になるため、あとで再調整する必要があるなど不便な点が多々ありました。 そこで、整骨院や整体所からの要望で作られたのが薄型メッシュタイプの骨盤バンドです。

薄型メッシュタイプの骨盤バンドが登場

左の写真は1990年代主流の高伸縮・薄型タイプ。 着衣の下に着けて使用するため、三重構造でありながら薄く、強靭に作られています。 主に、治療や施術後の状態を長く保つために、或いは一時的な痛みの軽減のために使用されます。
この当時は、着けていると気持ちが良いのでつい使い続けたくなる骨盤バンドでしたが、目的は「痛みの軽減」と「治療後の状態を保ち健康回復に努める」というもので、常用すれば筋力低下につながるので健常者の使用や美容痩身には向いていません。 当時も今も、良識を持った専門家であれば、そうした用途をしっかり伝えていらっしゃいます。

骨盤ベルトに当時からあった問題点

薄型メッシュタイプが登場した事で問題に上がったのは、利便性が上がったことでつい常用してしまう人が増えたこと、腰痛の方がバンドに骨盤バンドに頼りがちになってしまうという点でした。 腰にバンドを巻いて身体の支えを助けるわけですから、常用すれば当然血流は低下し、リンパ流も滞りがちになり、下肢のムクミや冷え、痺れなどを併発することが懸念されたのです。

そして実際に、「気持ちいい」、「着けてると安心」といった理由から、つい締め過ぎてしまったり、無闇に長時間着用し続ける人が増え、良識のある専門家の間では問題視されていました。 良識のある・・と言いましたのは、骨盤バンドの常用により腰痛が長引けば、それだけ患者の通院が続くことになるので、残念ながらそうした事実を伝えないところも少なくなかったのです。

そのあと徐々に登場し始めたのが、血流やリンパ流を促すために遠赤外線やマイナスイオンを発生する鉱石などを内蔵したタイプです。

遠赤・マイナスイオン発生タイプの骨盤ベルト

ここでは、ガイアロン骨盤ベルト(1995年頃)を紹介します。 ガイアロン骨盤ベルトは、血流やリンパ流の促進効果が認められた遠赤外線とマイナスイオンを発するガイアストーンを内蔵し、より長時間の使用が可能となった骨盤ベルトです。 ご使用になった方々からは「血行がよくなった」「暖かい」と好評を得ましたが、それでも基本的な使い方は従来と同様に長時間の使用はできるだけ避けるものでした。
今この瞬間も痛む腰痛を何とかしたい・・・という事であれば、ガイアロン骨盤ベルトを試されることをおすすめしますが、痛みのない時は出来る限り使用せず、腰回りの筋力回復に努めることを合わせておすすめしておきます。 「健康体を締め続けて良い事は一つも無い」 これが身体の仕組みを良く知る専門家達の偽らざる意見なのです。

骨盤矯正の根本的な解決策を探して

数々の経験を踏まえて、もっと根本的なところから腰痛を治せないか? 本来あるべき骨盤の状態へ戻せないか? という観点から開発が始まったのが「スリムロイナー」です。 当時の目標は次の通りです。
1.どうやって骨盤を整える筋肉を復活させるか?
2.それをどのように簡単にできるか?

骨盤は、その周囲に張り巡らされているインナーマッスルによって支えられていて、それらの筋肉がなくては締まる事も整う事も、自立すら出来ません。 では、筋肉はあるはずなのに骨盤が開いたり歪んだりしてしまうのは何故かというと、引き締めて整えておくべきインナーマッスルが緩んでしまっているから。 原因はとてもシンプルだったのです。 骨盤を引き締め、整えるのに必要な筋肉は、誰もが持っていて、単にそれが衰えてしまっただけなので、効率良く回復させる手段があれば、誰もが簡単に健康回復や健康維持に活用する事ができるのです。

骨盤矯正という発想

その頃には、徐々に「骨盤ケア」という考え方も生まれてきており、単なる骨盤バンドやナオザリに行われる整体の様なものではなく、かと言って時間のかかるストレッチや運動の様に大袈裟なものでもない、より日常的で効率的にインナーマッスルを回復させようという動きもありました。 また当社でも、インナーウェア、スポーツウェアなどの製造を通じて、深くフィットネス業界に関わっていたため、骨盤の根本的な問題解決に向けたプロジェクトとしてスタートしたのは自然な流れだったのかも知れません。

従来の骨盤バンドを使う事で腰痛が軽減されるという報告は受けていましたし、常に身に着けていれば腰回りのサイズが落ちていき、キツくて履けなかったパンツ類が履けるようになるなど、痩身的効果もあることもわかっていました。 しかし痩身効果については当然リバウンドが伴い、腰痛の併発にもつながる可能性もあるため、本来の目的外の「副産物」としてのサイズダウンでは、そのデメリットを軽視することは出来なかったのです。

バンドやベルト類、矯正下着などを身に着けて「骨盤を締めるほどの力」が常に身体に掛かっている状態で「骨盤が歪まない」「筋力低下を招かない」ということは、人体の構造上有り得ないのです。 そして筋力の低下は、姿勢の悪化、ヒップラインの崩れなど、美的外観を損なう結果につながり、便秘や冷え性、内臓下垂や腰痛誘発の危険性が増すことになってしまいます。 更に、筋力の低下により崩れた姿勢や体形は、なかなか戻り難くなってしまうのです。

コルセットやボディスーツの常用期間が長くなればなるほど、同じような理由から手放せなくなってしまう人が増加します。 高齢になる程ボディスーツやコルセットの着用率が高くなるのは、若い頃からの常用により筋力が低下してしまっている、典型的な『矯正下着依存症候群』なのです。

ハードガードルやコルセット、ボディスーツなどで身体を締め付けてみると、一瞬スタイルがよくなったように見えますし、常に身体が支えられているので楽です。 体型も補完してくれるため安心感も生まれます。 しかし、無自覚のうちに徐々に身体を衰えさせ、身体への悪影響を蓄積していく事になってしまうのです。

この時衰える、弱化、低下するのが主にインナーマッスルです。 日常生活ではその存在が気付かれ難いインナーマッスルですが、その筋力低下による症状は、慢性的な腰痛や冷え性、締まりの無い体形などとして表れます。 またインナーマッスルは、身体の内側に有って身体を引き締める働きをすると同時に、バランスを取る筋肉でもあります。 何気なく立っている時、トンと押されてフラフラするのもインナーマッスルの衰えによるものなのです。

この様な結果を招いてしまう骨盤の締め方では、とても「骨盤ケア」と言えるものではありません。 骨盤に限らず全ての骨格は、筋肉によって正常な状態が保たれているということを忘れてはならないのです。 整体などで骨格矯正を受けてもスグに戻ってしまうのもそれが理由です。 骨盤は外圧によって矯正されるのではなく、骨盤回りのインナーマッスルによって自ら矯正していくが正しい「骨盤ケア」のあり方と言えます。

余談ですが、整体にも色々あり、人間が持つ本来の姿を取り戻し、美容にもダイエットにも効果的な「整体術」と言うものもあります。 あまりにも安易な整体が増え過ぎてしまったため、現在ではそうした整体術は「自力整体」と呼ばれています。

こうして開発されてきたスリムロイナーですが、当初は男性向け、開発時の被験者も男性でした。 しかし、フィットネス向けに提供される様になって、最初に歓迎して頂いた方々というのが、マタニティビクスやマタニティヨガ等を通じてその存在を知った、産後間もないお母さん達だったのです。

当時は「骨盤矯正」という言葉が一般的ではなかったので、骨盤の開きや緩み、歪みの問題に直面していた産後のお母さん達の悩みと一致したのだと思います。『苦しいストレッチをしなくても開いた骨盤を引き締められる』、『育児家事に忙しい中で、たった3分でコアトレが出来る』、『便秘が解消された』、『産後の腰痛が治った』、『血流やリンパ流が良くなってダイエット効果が上がった』、等という声がたくさん聞かれました。 更に、トピナガードルとの相性がとても良かった事もあり、早々に産後の骨盤矯正ベルトとして広まっていったのです。

それが1995年。 最初にスリムロイナーが紹介されたのは保険組合で配布されている『赤ちゃんとママ』という冊子でした。

スリムロイナーの本当の目的は、骨盤を引き締めて整え、腰痛や冷え性を改善し、健康を回復するところにあります。 そしてこうした改善が見られれば、ウエストや腰回り、太もものサイズダウンは当然の様に起きるのです。 これが『骨盤矯正』という発想が生まれた背景なのです。 締めるだけでも骨盤は締まります。 しかし締めるのを止めればすぐに戻ります。 そして締め続ける事で様々な弊害を生むという事を十分に認識する必要があります。

骨盤矯正にはコアトレが不可欠

どうしたら正しい「骨盤矯正」を効率良く行えるのかという課題で様々な専門家に意見を請いましたが、立場によって考え方も様々で、なかなか的を得ませんでした。 そんな時、整体やカイロプラクティックの技術をもち、スポーツ選手やレスリング選手のボディケアなども手掛ける整骨院(柔道整復師)の先生に出会い、的確なアドバイスを求めることが出来ました。 曰く、『人間の身体は、支え続ければその支えに頼り、どんどん弱くなっていく。 腰を締め続けるのもそれと同じ。 支えるもの(締め続けるもの)が無くなれば、一気に戻るどころか、既に筋力が衰えているのだから、余計に悪くなるのは当たり前。 医学的理由も無しに身体を締め続けても良いことは一つも無い。』 という事なのです。 この意見こそ、長年取り扱ってきたトピナガードルのコンセプトに一致し、その時正に直面していた、正しい「骨盤矯正」のあり方という課題とも一致するものでした。 一つだけハッキリした事は、健康を保ったままで美容痩身、サイズダウンを実現し、尚且つ元に戻り難い身体を作るには、身体が頼ってしまうモノを常用してはいけないという事なのです。 他方、エクササイズの専門家に意見を求めれば、一様にストレッチによるインナーマッスルの強化をすすめます。 これは骨格の変形や歪み、骨盤の開きといった問題に筋肉が大きく関わっているからで、理に適った方法です。 整体の分野にも、こうしたストレッチなどを取り入れた「自力整体」というものがあります。

当社もフィットネス業界に深く関わってきましたので、ピラティスや一部のヨガ、ストレッチポールやバランスボールといったコアトレの有効性はよくわかっていますが、ここで問題なのは、そうした有効なコアトレでは、必要な基本動作を身に着けるために専門家の指導が必要になる点と、一回に30〜40分といった時間がかかるという点です。 書店に行けば色々な指導本やビデオ(最近ではDVD)なども数多くあり、そうした情報には手軽に触れる事が可能ですが、実は、そうした専門情報を手本にしたとしても、初心者が正しく身体を動かすことは大変に難しい事なのです。 例えば、脂肪燃焼系のエクササイズの場合であれば、大きく身体を動かす事が中心となりますので、見よう見まねである程度の動きをトレースしていく事は可能ですが、インナーマッスルの整っていない身体では効果が半減するとも言われています。 それは、コアの衰えによって体温や基礎代謝も低下しているからで、脂肪燃焼効率を低下させ、ダイエットの足を引っ張る要因になるからです。 また、平均的な外回りの営業マンの1日の平均歩行は約1万歩と言われていますが、ダイエット効果としては残念ながらかなり低いという事も例として挙げられます。 普段の歩き方とコアを使った歩き方は違うからです。 そしてインナーマッスルの使い方を忘れてしまった現代人にとっては、簡単ではないコアトレを如何にして身近なものにするか、ということが重要な要素となってくるのです。

いずれにしても、骨盤を引き締めて、同時に歪みや傾きも直しながら、その状態を長く維持するためにはインナーマッスルの強化が不可欠であり、それを怠ったままでは悪循環から永遠に抜け出せないという結論に至りました。

そこで、骨盤ベルトとストレッチを上手く組み合わせて、骨盤を効率よく引き締め、しかもリバウンドが無いようにするための工夫を重ねて、新たなエクササイズ方法、新たな商品の開発が始まったのです。 しかし、期待していたような効果を得るのは、実際には簡単ではなかったのです。

骨盤矯正のためのお手軽コアトレ開発

先ずは順当なところで『腰回しストレッチ』 これは最も手軽に身体のコアをトレーニングできる方法であり、骨盤の状態を整えようとする働きにもつながるので、様々なトレーニングの準備運動に取り入れると、筋力の均等化に役立つものです。 しかしこれは、ウエストを引き締める効果はあっても、骨盤を締める事は出来ませんでした。 そこで、このストレッチをする際に、いわゆる骨盤バンドを装着してみたのですが、特に相乗的な作用も見られなかったのが実際です。

現在では、骨盤バンドとストレッチを組み合わせた商品もあるようですが、どれも伸縮ベルトと従来からの腰回しストレッチの組み合わせなので、まず効果は期待できないと言えます。 なぜなら、一般的な腰回しストレッチはヒザを曲げ、やや腰を落し気味にして行うもので、骨盤を緩めて整える作用はあっても、そもそも引き締める効果は無いからです。 こうした類似品の多くには、いずれもスリムロイナーの効果を見て 『腰にベルトを着けて腰回しをすれば骨盤が締まる』 と勘違いしているケースがあります。 中には腰回しだけでは締まらないため、様々なストレッチ法を取り入れ、一日に30分程の運動をすすめる商品もあるようですが、30分間もストレッチを行える時間的な余裕が有るのであれば、むしろ骨盤ベルトなどは必要無いとも言え、何のためにベルトをするのか、本末転倒な便乗商品が沢山あります。 しかし、現実にはこれが流行というものなのでしょう。 ただ、ストレッチとの相乗効果が得られなかったのは、当時の骨盤ベルトに伸縮性があった事と、膝の屈伸が大きく関係していた事が判ったため、この腰回しストレッチの応用編が大きな意味を持つようになったのですが、それは後述します。

続いては『膝開閉スクワット』これは正に骨盤を閉じる動作を行うものなので注目すべきストレッチではあります。 実はこのスクワットは、ヨガ・エクササイズの中からある特定の動きを抜き出したものです。 この膝開閉スクワットは、確かに多少は締まります。 しかし、ウエストなどの上半身には効果が見られず、太もも全体を使ってやや強引に骨盤を内側に引っ張っているので、太ももが太くなったり、腰部の筋バランスが崩れる可能性があります。 何故なら、それは本来「陰」と「陽」といった動き、つまり、開いて閉じるという2つで1セットである動きによって身体全体のバランスを整えようとする整体エクササイズの中から、「閉じる」部分だけを半ば強引に抜き出したものだからなのです。 そのため、どうしても偏った動作になってしまい、特に膝にかかる負担が大きく、膝にかかった負担を和らげるには反対の動きをしなければならず、そうすると今度は骨盤を開く動作をすることになります。 言い方は極端ですが、「骨盤を締める」という目的のために、膝を犠牲にしてしまうところがあるのです。 またこの動きだけでは太ももの筋肉が偏って発達することもあり、骨盤だけをターゲットにした対処療法的要素が強い傾向にあります。 そこに骨盤バンドを上手く活用出来ないか工夫を重ねてみましたが、結局は、「膝の保護が優先」という結論に至り、相乗効果を見出すことは出来ませんでした。 もちろんヨガの他の動きも取り入れていけば、陰と陽、緊張と弛緩、といった大変バランスの取れた優れたストレッチとなり、それは大変素晴らしいものとなります。 ただ、それにはやはり専門家の指導と、横になれる場所や、30〜40分といった時間が必要となります。

本末転倒からの原点回帰

こうしたストレッチとベルトとの応用を研究するうちに、ある重要なことに気づきました。 本来当社が目指していたことは、どんなに多くても紙一枚程度の説明書で済む「簡単さ」で「骨盤を引き締めながら」「腰部のインナーマッスルをトレーニングする」という事であったのに、骨盤を引き締めようとする事に注目するあまり、根本的な目的を見失っていました。 つまり、「骨盤を締める」という事を第一の目的にしてしまうから対処療法的になってしまうのであって、対処療法になってしまうから「タレ尻」や「リバウンド」といった副作用を生んでしまっていたのです。

そこで最初から考えを改め、コアトレをすることで身体の中心部を鍛え、結果として骨盤が引き締まるのであれば、それがすなわち元に戻らない引き締めであり、リバウンドの無い骨盤の引き締めになると、あらためて気づいたのです。

そして新発想の骨盤矯正へ

途中の試行錯誤は省略しますが、腰回しストレッチをする中で、身体のニュートラルポジションを保ったままで、頭を軸にして腰の稼動だけ使って腰回しを行うと、胸下からウエストにかけてと太ももに緊張と弛緩の繰り返しが起こり、非常に有効なストレッチが行えることがわかりました。 10分程で、身体の中心が温められたときに表れるジワッとした発汗も見られたため、コアが使われている事も容易に推測されました。 膝を伸ばしているため、膝に負担がかかる事も無く、太ももが太くなってしまうこともありません。

しかし同時に、なぜそれまでこの様なストレッチが行われていなかったのかもわかりました。 全身を棒のように固定した状態で腰だけを回すと、股関節や仙腸関節に大きな負担が掛かってしまうのです。 特にストレッチを繰り返すうちに関節の稼動域を超えてしまったり、仙骨への負担が増していく可能性があり、多くの専門家をして「確かに有効ではあるが推奨できない」という、いわゆる「禁じ手」のような存在でもあったのです。 しかし、まだ可能性はあります。 例えば、太極拳の中には良く似た動作を行う一派があるのです。

そこでこの「膝伸腰回し(仮称)」に骨盤バンドを加えてみました。 しかし・・・。 膝伸し腰回しでは股関節に負担が掛かるのだから、そこを保護しようという発想は良かったのですが、骨盤バンドの装着性を高めるための伸縮性が仇となり、結局股関節や仙骨を保護する役には立たなかったのと、腰の回転時に起きる腰部の膨張に合わせてベルトも伸び縮みしてしまうため、直接的に骨盤を引き締めるような働きが弱かったのです。 また腰部引き締めの際に重要となる仙骨の保護という点では、仙腸関節部分にパットを入れるなどしてみましたが、弱い力とは言え内側に押し込んでしまうため、保護するどころか返って危険性が増すことも考えられました。 ベルトとストレッチの組み合わせ。 その発想は良かったのですが・・・。

実際、ここでまた暗礁に乗り上げたような状態になりました。 身体が何かに頼ることなく、目的達成に必要なものは全て採用し、不要なもの、悪要因となるものは全て排除する。 それを追求すると SIMPLE IS BEST となる。 トピナガードルのコンセプトは合っている。 だからこそ、派手では無くてもリピーターさんやクチコミによる紹介者、母子2世代のユーザーさんに繋がっている訳で、骨盤の引き締めにしても、ごく簡単で根本的な解決方法がきっと何かあるはずなのです。

アメリカから来た黒船ならぬ黒帯が大きなヒントに

そんな時、全くの偶然に、アメリカから真っ黒いベルトが持ち込まれました。 これと同じものが日本で製造出来ないか?という相談のためでした。 使用目的を聞くと、「運送業界や、建築作業員向けのもので、腰を保護する目的でウエストに巻いて使用する」との事でしたが、厚みが有って、無骨で、硬い芯材にウレタンなどを巻いて装着感を良くした様なモノで、ちょうどウエイトリフティングの選手が腰に巻くベルトに似ていました。

そのアメリカ生まれのブラックベルト(仮称)は、衣料品を製造している立場では考えにも及ばなかったもので、全く新しい発想に繋がりました。 スポーツくジムへ行けば、似たようなベルトは沢山有ったのですが、発想が繋がらなかったのです。 試しに、そのブラックベルトを、ウエストではなく骨盤の位置に巻いて、先程の膝伸腰回しを行ってみたところ、まだまだ改良の余地は有るものの、以前に体験して好感を持っていたピラティスに似た、かなり期待できそうな体感が得られたため、早速、依頼品と自社品の両側面から試作を開始する事になりました。

そこからは試行錯誤の連続で、最終的に芯材としてウレタンフォームを採用する事になったのですが、柔軟性というより硬度が問題となりました。 柔らか過ぎると前述の様に使用する意味が無くなってしまい、かといって硬すぎると身体にフィットしません。 また隙間が多く空き過ぎると股関節や仙骨の保護にも向かなくなります。 適度な柔軟性を持ちつつ伸縮性は出来ればゼロ。 そうして最適な硬度にするためには、素材の選別や厚みの選定も去ることながら、複合素材を用いる事が必要となりました。 表面へ特殊な生地を貼り付ける事で、柔軟性を保ったまま伸縮性を無くし、硬度を保ちつつ装着性を上げるなど、徐々に段階を踏みながら解決していきました。

素材の硬度と同様に形状も重要な要素でした。 股関節が自由でなければ膝伸し腰回しは出来ませんし、必要以上に動いては股関節への負担が懸念されます。 最も適していた形状が、日本に古来から伝わる『垂』を応用した形状です。 日本の着物には優れたデザインが沢山含まれており、この時も、垂のデザインを採用する事により、スリムロイナーの原型に近づいたと言ってよいでしょう。 またベルトの幅が狭いと、回転時に上昇する腹圧が逃げてしまうため、折角のコアトレーニングも効果が落ちてしまいますし、広過ぎても思うように腰を回せなくなってしまいます。 こうして独特の形に近づいて行きました。 同時に従来からあるガイアロン骨盤バンドにもその形状を応用していく事になったのです。

内側に使用する素材選定も軽視出来ないものでした。 基本的にコアトレーニングによって骨盤を引き締め、元に戻り難くするストレッチの効率を飛躍的に向上させるのが目的ですので、想定する使用時間はごく短時間です。 従って衣服の上から使用するのが自然で、ずれ難くするためにも、摩擦係数の高い素材を内側に使用する必要がありました。 また状況によってはエクササイズのスタジオ等での使用も考えられるため、肌触りと吸水性、速乾性も求められます。 そこで内側には高密度異形状アクリル繊維をパイル状に編んだものを使用しています。

こうして完成されていったベルトを使って、様々な立場の人に膝伸腰回しを2週間ほど試して頂き、必要なポイントをまとめていったところ、次の様なメリットが意見として集まりました。

● コア(身体の中心部分)が暖まる。
● 骨盤周囲のインナーマッスル(主に中殿筋、腹斜筋)が使われているのがわかる。
● 数分間の使用で汗ばむ。(コアが使われるため)
● 内臓が動かされているためか、お通じが良くなる。
● 足先の冷え性が解消された。血行が良くなったと思われる。
● ウエストから太ももにかけて筋肉の緊張と弛緩が繰り返されるのでストレッチ効果が高い。
● 仙骨や股関節がしっかり保護され、過剰な動きを制限してくれるので安全。
● 膝を伸ばしている状態なのに腰を回しやすい。
● 腰回しで使っている以外の身体にかかる負担が少ない。

デメリットとしては、『もっと薄い方が良い』や、『両手を離しても腰に固定できないか』といった意見が寄せられました。 いずれも今後の検討課題ではありますが、開発過程において機能と効果を優先した結果の排他条件ではありました。

インナーマッスルを効果的にトレーニングしながら、骨盤を正しく引き締めようとすると、ベルトの装着位置は腰骨の下側になります。 この部分は男女を問わず、下に向かって広がっている部分なので、どうしてもベルトがズリ上がってくる現象が起きます。 そこで、ベルトがズリ上がらない様に補助ベルトを付加する案もあったのですが、実際に補助ベルトを使うとちょうど股関節を覆うように位置するため、肝心のストレッチ効果を半減させてしまいます。 また後に回った補助ベルトがヒップを圧迫し、太ももへのストレッチ効果を半減させてしまいます。 そうした理由から、安易な装着性向上を意図することによって効果を半減させてしまうのは本末転倒であるという結論に至りました。 その分、内側に摩擦係数の高い素材を用いる事で、効果の向上を優先したのです。

今のようにメタボが騒がれていない時でしたが、思いの他男性からの注目度が高く、当初の調査に協力して頂いた方の中には男性が多く含まれていました。 男性の場合3〜4ヶ月かかりますが、30代以上の方であればジーンズのワンサイズダウンも可能になります。 そしてキチンとコアトレーニングされた結果の引き締めですので元に戻り難く、時々メンテナンスをするように行うだけで、体型を維持できるようになります。

現に、ある被験者は33インチのジーンズを履いていましたが、約4ヶ月で32インチのジーンズが楽々入るようになり、もう少しで31インチにも届きそうな勢いでした。 そして10年以上経っても、サイズをキープしています。

新しいストレッチ・クイックエクササイズの開発

そして実際に試してみた結果、膝伸腰回しはゆっくりと大きく回した方がより効果的で、2秒では早すぎ、4秒では間延びしてしまうため、3秒に1回という、ちょうど良いタイミングに落ち着きました。 右に10回、左に10回、これで1セット。 普段使われる事の無いインナーマッスルが使われるため、人によっては1セット2セットでも十分ですが、4セットや5セットになると多過ぎる場合もあることがわかりました。 こうしてクイックエクササイズの3セット、3分という時間も決まりました。 やみ雲に1日3分と言っている訳では無いのです。 スリムロイナーがあるからこそ実現したクイックエクササイズであり、クイックエクササイズだからこそ3分間で十分なのです。

こうして完成した無伸縮骨盤ベルト(当時は伸びないという事が画期的でした)を、産後のママたちに向けて、当時人気上昇中だったサッカーに真似て「ママ・サポーター」という名称で発売したのが、1964年のことでした。 そこで更に意見を集約し、翌年スリムロイナーとしての販売を開始したのです。

当時はまだ『骨盤矯正』という言葉すら珍しいものでしたので、その意義を訴えるのにちょうど良い言葉でもあったのですが、実際には、外部からの力によって矯正されるのでは無く、効率的なコアトレーニングによる結果として骨盤がしまっていくので、骨盤矯正ではなく、骨盤修整という言葉が、スリムロイナーにとっては正しいのです。

スリム・ロイナーの発売以来、体験談の募集等は特におこなってきませんでしたが、「ご意見をお聞かせ下さい」という返信用葉書によって、時々嬉しいご感想を寄せて頂いております。 またこれまでのところ、「スリムロイナー」を装着した状態で日々の家事を行うことも、骨盤の引き締めや腰痛予防に対しては良好と報告されています。 実際、重いものを持ち上げるときなど、スリムロイナーを着けていると上昇する腹圧を抑える働きにより、普段より楽に持ち上げられるという報告もございます。 しかし、通常は、やはり「クイックエクササイズ」を行うことをメインに考え、日常的に腰をサポートするのは補助的に考えられた方が良いと思います。

骨盤は、単に締めれば良い、というものではありません。 腰部の関節を保護しながら、身体の中からケアしていく事が大切なのです。 最近ではすっかり一般的になった「骨盤矯正」そして「骨盤ケア」ですが、これはブームであり流行です。 一生付き合っていく身体の要となる腰に関することですから、もう一度基本的なことから見直す必要はあると思われます。

長文、読み難い点などはご容赦下さい。
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